大学開学10周年

 本学は、30有余年に渡る短期大学の歴史を大きく発展させるべく平成15年、全国初の「こども学部」を開設。
その4月、初々しい1年生が入学して以来、10年が経過しました。

 午前中は、こども応援ひろばパートⅠとして、多くのこどもたちが、保護者に手を引かれてやって来ました。紙飛行機をどこまで飛ばせるかと子どもたちは必至、コップのなかにコインを上手に入れることができるか、スライム時計づくりに取り組んだり、世界に一つのキーホルダーづくりやスクラッチ画に挑戦。日頃はなかなか見ることのできない幼児たちの真剣な眼差し、つられて保護者も真剣。そして学生たちの「人形劇部ぶろっさむ」が演じる“三匹のやぎのがらがらどん”を鑑賞する親子。なんと9号館1階、2階には、500名近くの親子で大賑わい。

 午後からは、開学10周年記念式典・記念シンポジウムが開催された。式場には、東大阪市長の野田義和様をはじめとする来賓の方々、高校関係者、他大学の関係者、後援会、卒業生、旧教職員、そして在学生。記念シンポジウムでは、『これからのこども学部への期待~日中の模索と課題から~』というテーマで2時間半に渡って発表、シンポジウムが行われた。奈良女子大学大学院教授の麻生武先生は「日本と中国の幼児教育の共通点と相違点」というテーマで、人間が哺乳類の中の優等生であるのは、他の哺乳類より「遊びをよく知っており」「遊ぶのが得意だ」からである。そして日本と中国の幼稚園について話された。「中国における子ども学再建の意義」というテーマで上海師範大学教育学院学院長の陳永明先生は、こども学という学際的学科開設の動きが世界各国で見られる今日、こども学の再構築は中国でも重視されており、上海師範大学では「こども学」は新学科として博士課程の枠組みに組み込まれた。そして教員養成教育の重要科目として「こども学」は位置づけられているとのこと。他の先生方の発表。そして吉岡副学長のコーデイネーターで展開された。

 中国は、世界で最も子どもの多い国である。しかし、一人っ子であるため、いろいろな面で恵まれてはいるが、一方では心身発達のアンバランスが見られる。たとえば、子どもの独立性、社会性が低くなっており、また、自分中心で集団性に欠ける面が見受けられるといった報告がなされた。そして家族にとって子どもはとても大事な存在であり、それだけに幼稚園に対する要求水準が高く、それは時には幼稚園への苦情となって表れてくる。親は、勉強と遊びを対立的にとらえる傾向があり、保護者の考えを変えることも必要である。中国も少子化へ向かっており、ことに都市はそうであり、このまま進めば、将来は深刻な事態を招くと。

 副学長からは、我々は日本の教育だけを見ることなく、中国をはじめ各国のそれを見ることの必要性を話し、シンポジウムに参加している本学の学生にとっては、またとない良い機会であり、これを今後に生かしてほしいと締めくくった。

 さて、今日という日は一つの通過点ではなく、新しい歴史の出発点を画するものであり、10年の年輪を一つの節目として、良き伝統の上に新しい伝統を築いていかねばならない。そして東大阪という地域に根ざした大学として、ますます活力のある、より充実した学校づくりに邁進していくことである。

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