4月中旬、午後6時から新入生歓迎会が9号館1階リビングホールで行われた。大学の学生会、短大の学友会が中心に企画して開催されたものである。キャンパスの所々、エレベーターの中などに彼らの手によって新入生へのお知らせの掲示がなされていた。高校を卒業して大学、短大に入学した新入生にとっては、まだまだ不安な毎日を過ごしているであろう。ことに地方から来た学生たちは。こう考えた先輩達が後輩のために考え、数年前から実施している。
日が少し暮れかける時間、その場所に行くと、先輩たちがテーブルを動かしたり、飾り付けをしたりと、それらしい雰囲気に模様替えしており、彼らが、近くのコンビニ等から買ってきたジュース、お菓子、空揚げ、焼きそばなどをテーブルに並べてあった。女子学生の音頭で“乾杯”の掛け声のもとに始まった。先輩、新入生、そして教員が加わって実に賑やか。各自がテーブルの物を食べたり、先輩と後輩が、新入生同士が話に興じ、楽しくワイワイガヤガヤと賑やかなひととき。そのうち、先輩がダンスを披露していた。
ふと見上げるとリビングホールの頭上高い2階、3階には、鯉のぼりが90匹程泳いでいる。この9号館は、吹き抜けになっており、開放感溢れる憩いの空間である。いつも学生たちが、思い思いに談笑している。2階にはベビーベッドや遊戯室、絵本コーナー(こども文庫)など乳幼児保育ができる設備が整っているこども研究センターがあり、朝から親に手を引かれ、或いはバギーカーに乗せられて多くの乳幼児がやって来る。そこでは、保育士を囲んで親子が学び、そして学生たちが実習や子育て支援活動を通して、子どもや保護者と触れ合っている。
親子で作った鯉のぼり、大きな真鯉、緋鯉、そして小さな鯉。3m程の巨大な2匹の鯉は、以前に保護者と子どもたちが作ったもので、その横に並んでいるのは、今年、子どもの身長に合わせてお父さん、お母さんと子どもたちが新聞紙などで作ったもの。中には染め紙や画用紙に子どもの手形をかたどった飾りもあり、様々な趣向を凝らして巧みに作られている。学生たちのアイデアも手伝って、手作りで作られた鯉のぼりが吹き抜けの2階、3階ロビーに渡した細い紐に、子ども達の夢を抱いて泳いでいるのである。子どもの成長記録として作った日と、その子の年齢(○歳○か月)、名前を書いてもらい、飾った後は親子に返される。子どもの成長が比較できるように、去年の等身大鯉のぼりを大切に保存しているお母さんもいる。それは、子の成長を願う親の心でもある。
泳いでいる鯉は、子どもの背丈。来年は、どんな大きさになるのだろう。親も子も楽しみ、ここにも夢がある。毎日、こども研究センタ―にやって来る親子が、自分たちで作った鯉のぼりを見上げている。