夜の冷え込みが急に厳しくなり、寒さがこたえる12月、我が家の近所の何軒かは、クリスマスイルミネーションを飾りつける。簡単なものから、かなり手の込んだものまで。普通の門灯が灯っている家の前が、12月の一時期だけは、きれいな輝きを見せる。前を通る人は、眺めながら歩いている。
いつもは小さな門灯だけがついている住宅の一角が、さまざまな色できらきら光るのは、夢があっていいものである。聖なる夜に輝く光は、我々を一瞬童心にかえらせ、忘れかけていた何かを思い出させる。街をきらびやかに彩るイルミネーション。このイルミネーション、いつ頃から始まったものか。そんなに昔のことではないと思う。
かつてクリスマスというと、キャバレーが繁盛したり、飲む人は何かと飲む理由をつけ、そのきっかけにしていたものである。ミナミの街は、酔った人で賑わっていた。それが、今や様変わり。ジングルベルとともに、ケーキを買って家族とともに食べる人が増えた。街やデパチカには、ケーキを買い求める人が並び、ケーキの箱を持った人が歩いている。
大阪では川に囲まれた中之島公園を中心に、光と水のハーモニー演じる「OSAKA光のルネサンス2010」と「御堂筋イルミネーション」が大阪市北区の中之島周辺と御堂筋で開幕した。中之島は、堂島川と土佐堀川に挟まれた東西に細長い中州。江戸時代以降、ナニワの繁栄を大きく担い、その発展の中心となってきた地である。そこには、水都大阪を代表する近代建築が並び、川にはライオン像で有名な重厚にして華麗な難波橋(なにわばし)などの歴史的な橋が架かっている。住友家の寄付により明治37年に建てられた「大阪府立(中之島)図書館」。北浜の相場師岩本栄之助氏の寄付百万円(当時)により大正7年に完成した緑青のドームと赤いレンガの「大阪市中央公会堂」。どちらも重要文化財。
普段のこの辺りは、これまでもしばしば訪れたことがある。しかし12月には、大阪市役所、歴史的建造物である中央公会堂をはじめとして、この辺一帯が建物のライトアップと燦然と輝く光のオブジェの中に浮かび上がる。昨年、初めて行ってみた。そして御堂筋へと。着飾った銀杏並木は何十万個のLEDの光で、メルヘンの世界に迷い込んだように美しく、かつ幻想的な光のアーケードロードを作っていた。人々に幸せな気分と夢を与える。このときばかりは、散らかされたゴミも隠れる。しかし、それを演出する側の労は大変なものであろう。かなり早くから準備し、色や種類を増やしたり、デザインを考えたりと、そのレイアウトに心血を注ぐのではないだろうか。それだけに、夢とロマンに浸りたいものである。
かくのごとくクリスマスの時期になると、公共の場、個人の家と、全国さまざまな所できらきらと輝く。クリスマスの時期でなくとも、イルミネーションがなくとも、きらきらと輝く町、人々に夢を与える社会であればいいのになと、ふと思う。