寝台特急「日本海」(大阪―青森)の定期運行最終便が先月16日、JR大阪駅を出発し、関西発着のブルートレインが姿を消した。青色の客車がゆっくりホームを離れると、別れを惜しむファン約2000人が「ありがとう」と拍手で送り出したと報道していた。2月16日に発売された最終便の寝台券310枚は15秒で完売したという。いつも不思議に思うのだが、普段乗ったこともない人が、これが最終だとなると客が殺到する。百貨店やスーパーの閉店の際も同様の現象がよく起こっている。もっともこちらの方は、値段が安くなるからだろうが。
国鉄時代から親しまれた関西発着のブルートレインは、新幹線や高速道路の充実などによる乗客の減少、そして車体の老朽化により姿を消してしまった。この「日本海」は1950年に急行として運行を始め、68年に寝台特急になった。一時は1日2往復していたが、利用客の減少で廃止が決まり、今後は、年末年始などの臨時列車となる。
夜行列車「きたぐに」(大阪―新潟)も同じく16日発の列車が定期のラストラン。午後11時27分、下り最終便がJR大阪駅を出発した。青い客車を機関車が引くブルートレインで、残るのは「北斗星」(上野―札幌)と「あけぼの」(上野―青森)2列車となったそうである。
人影もまばらな夜のホームに静かに停まっている青色客車には、なんとも言えぬ風情があった。夜行寝台の先には故郷があり、そこには待っている人がいる。列車は半世紀近く走り続け、その間、多くの人々に喜びを与えてきた。そしてときに悲しみも。ホームで、或いはテレビでそれを眺め、昔を思い出し、涙を流した人もいたと思う。
私自身、若い頃、東京へ行くのに、夜行急行「銀河」に何度か乗ったことがある。うっすら明けてかけてきた東京、そのベールを剥ぐようにホームに列車が滑り込んで行く。この列車も、とっくの昔に無くなった。「日本海」ではないが、寝台列車に乗ったこともある。深夜を走る列車の固い座席でうとうとしている時、ベッドに横たわっている時、レールの繋ぎ目からだろうか一定のリズムで響いてくる振動。なんとも郷愁が感じられた。
昨年3月には、上野~金沢間を半世紀以上にわたり走ってきたJRの寝台特急(ブルートレイン)「北陸」と夜行急行「能登」がダイヤ改正で廃止となり、半世紀あまりの歴史に幕を閉じた。こちらの方は懐かしいボンネット型で、その時も、金沢駅のホームには、最後の姿を見んものとカメラを持った人たちがホームにあふれ、別れを惜しんでいた。
車体を撮影する鉄道ファン。田園を走る列車、鉄橋を渡る列車、そして今回のようなラストラン。時々、線路内に立ち入ったりして問題を起こしていることもあるが、彼らを「撮り鉄」と言うらしい。この「撮り鉄」、小学生から、かなりの年配の人まで様々であるが、テレビのニュースで見る限りは、なぜか男性ばかり。我が家の近くを走っている路面電車を撮影している人も多い。ことに日曜などは。ここでも男性ばかり見かける。女性もいるのだろうが、圧倒的に男性である。男性の方が、ロマンを求めるのだろうか。それだけ男性は傷つき易いということ???