先月は七夕。七夕の頃になると、あちらこちらの幼稚園、小学校をはじめとして、笹の飾り付けが行われる。願いを書いた短冊を笹に結び付けるなど、夢がある。我が国では、七夕は奈良・平安の貴族に星の恋の物語としてもてはやされ、全国に広まったそうだ。江戸時代には家ごとに笹飾りを立てお供えを並べて、家族で星を眺めるという庶民の楽しい年中行事だったらしい。東大阪大学こども研究センターにも、七夕が飾られていた。研究センターにやってくる地元の親子が、保育士や学生たちと作った七夕の飾りが。
幼い頃、誰からともなく聞いていた織姫と彦星にまつわる天の川を挟んでの悲恋の物語である。ところで、殆どの人は、この二人を恋人と考えているであろう。実は、織姫と彦星は夫婦なのである。二人は働き者だったのだが、結婚してからは、機織りと牛飼いの仕事を怠けるようになり、天帝の怒りを買って引き離された。年に一度しか許されない星合の物語が、恋の成就を阻まれ、一緒になれない二人と言うイメージを定着させたのであろう。いずれにしても七夕には、夢がある。
星という字は、“生まれた日”と書く。考えれば、星という字そのものにロマンを感じる。子どもの頃に天の川なるものを聞いていたが、大阪では見ることはなかった。本当にそんな大きな星の帯が空にあるのだろうかと思っていた。小学生の時、夏休みに兵庫県の親戚の家に泊った際、真っ暗の空に天の川が横たわっている光景を眺めて、本当にあるんだと、その美しさに見とれたのを覚えている。日本に古来から、庶民の間に根付いている七夕の物語、そして天の川を眺めれば、星空に美しい物語が生まれる。誰かの文に“星座は、漆黒のカンパスに描き出された夢とロマンの世界である”というのがあった。
ところで、夏は一年中で一番たくさんの流れ星が飛ぶ季節である。7月20日頃から8月20日頃にかけて出現し、なかでも8月13日前後をピークに現れるペルセウス座流星群がピュッピュッと星空のあちこちで飛ぶそうである。流れ星が消えないうちに願い事を三度唱えると願いが叶うとの言い伝えもあるとのこと。夏こそ“星に願いを”の絶好のチャンスと言えよう。
かなり以前だが、星がもっとくっきり見えるようにと、大阪ではネオンをはじめとして無用な電気を消そうという運動があったように思うが、いつのまにか言わなくなってしまった。大阪では、空を見上げても見える星の数は少なく、もちろん天の川は存在していても、肉眼で見ることができない。神様が、大阪に住む我々には、夢とロマンを抱くことを許さないのだろうか。そんなことはないだろう。