8月6日、甲子園で高校野球開会式が行われた。普段、開会式はテレビのニュースで見るぐらいなのに、私が勤務する村上学園の東大阪大学柏原高等学校が大阪代表として出場していると、やはり開会式そのものをテレビで観戦してしまった。不思議なものである。
今年は開会が例年より早く始まった。節電で球場のライトの使用を抑えるためである。暑い青空の下、球場に並んだ49校の選手は、正面を向いて、細かい動きはあるものの、彼らはきちんと整列していた。当然と言えば当然だが、このことが今日できない高校生が多くいるのが現状である。
私自身、甲子園など別世界のことと思っていたら、まさか我が学園で生起するとは予想もしなかった。教員になって公立で38年、現在の勤務校で9年目、都合47年目に初めての経験である。1回戦、2回戦、アルプス席の外側で、自校の試合を待った。身動きも出来ない人ごみ、猛暑、そして応援する人々の熱気の中で待つこと約1時間半。その間、球場内で今、行なわれている試合の歓声が外で待っている我々に怒涛の如く聞こえてくる。そして柏原側に応援に来ている多くの関係者、子どもから柏原OBのお年寄りまで、熱い思い、あの熱気は何とも言えない。一体感と独特の雰囲気。形容し難い、凄いの一言。
この歳になってこんなことを経験するなんて、有り難いことである。うだる暑さの下、これをもろともしない甲子園のあの熱気、凄さを体感、体験できた。
応援団を運んでくる何十台というバスの列。甲子園周辺の人の群れ、雑踏。そしてスタンドでの大声援。なかでもアルプス席は大騒ぎ。強い真夏の西日をものともせず、自校がチャンスをつくった時は皆立ち上がっての声援、メガホンの声、団扇を叩く音、手拍子と拍手。ブラスバンドの響きにチアガール。苦境に陥ったときの一瞬息の止まった静寂と声援。そのあとの歓声と溜息。球場全体が生きている、唸っている。その中を、一羽の鳩が時々、スタンドに舞い降りてくる不思議な光景。
1回戦の初出場という重圧ののしかかる中での安定した勝利、2回戦は負けたとはいうものの大健闘。延長10回で力尽きたが、素晴らしい試合だった。翌日の新聞には、“「残念、でもようやったよ」。あちこちから飛び交う選手をねぎらう声が、試合を象徴していた。”と書いていたが、まさにその通りであった。
全国の高等学校から勝ち抜いてきた代表校が集う全国大会は、憧れの甲子園出場の夢をかなえた高校生、選手同士の勝負であり、勝った側に華があると同時に、負けた側にも華がある。そして今、甲子園初出場を果たし、素晴らしい試合をした柏原高校野球部は、その歴史に輝かしい1ページを記した。来年は2ページ目を記すであろう。2回目の夢を見せてもらおう。