COLLEGE MAGAZINE

インタビュー vol.16 岡本 貴司 准教授

「製菓衛生師コース」学びの視点をお伺いしました。

岡本 貴司 准教授
COLLEGE MAGAZINE vol.39 Interview vol.15

他にはない「製菓衛生師コース」の強みを教えてください。

実践食物学科には「製菓衛生師コース」ともう1つ「栄養士コース」があります。
令和を迎えた今、製菓業界も「食物の成分を考えながら作る」時代が訪れています。お菓子は「美味しい」だけではダメで、カロリーをはじめ栄養成分、アレルギーなどを考慮する必要が出てきました(2020年度「食品表示法」施行)。本学には栄養士コースがありますから食品表示に関する指導が可能で、製菓衛生師コースでも新商品を開発するときは学生にすべて栄養分析をさせています。これは全国的にも珍しい本学の強みだと思います。

専門学校ではなく短期大学部で学ぶメリットとは?

2017年に立ち上がった製菓衛生師コースは、当初から「本学は専門学校とは違う」ということをはっきり打ち出そうと決めていました。専門学校は技術の習得、免許の取得に重点が置かれています。しかし、本学では製菓以外の一般教養科目を履修します。「人間としての育成」、そこに「専門知識」をプラスして学ぶという考え方です。
本学の特徴は、製菓衛生師以外の免許を取得できる点です。フードサイエンティスト(食品科学技術認定証)やパティスリー・ラッピング検定資格など製菓業界に関わるものはもちろん、社会福祉主事任用資格という老人福祉施設や児童福祉施設など、福祉の職場で働く人に必要な基礎資格にも対応しています。最近、パン作りに取り組む支援学校が増えています。この資格を持っていれば、例えば午前中は製菓衛生師として生徒さんにパン作りを教えて、午後は福祉施設の職員として生徒さんのお世話をする…ということも可能です。つまり、本学では製菓衛生師コースに入学したからといって、進む道がお菓子作りだけとは限らない、可能性が広がっている、ということなのです。

実習が多いですが、通常の授業以外にはどのようなものがありますか?

地域の商品開発の依頼を受けて、学生たちと取り組むことがあります。2019年11月には道の駅「奥河内くろまろの郷」で、学生たちと一緒に商品開発した「バターナッツカボチャの焼きドーナッツ」を販売させていただきました。「お土産」として日持ちするもの=クッキーなどの焼き菓子でなければなりません。生菓子もありますが、そういったものには保存料が入っています。保存料は使いたくありません。では、素材を活かせるお菓子は何か?どうすれば素材の旨味が十分に味わえるか?と何度も試行錯誤を重ねて作り上げました。販売価格は1個200円。工場での大量生産ができるわけでもなく、ひとつひとつ手作りですから、少し高くなってしまいました。それでも、ありがたいことに当日は多くの方にご購入いただきました。

「くろまろ秋の大収穫祭」レポートはこちら

また、今年度はオープンキャンパスで「アフタヌーンティーパーティー」として、来場者に手作りのお菓子を振る舞いました。

「アフターヌーンティーパーティー」レポートはこちら

プロの現場で求められる人材を育成するために気を付けていることは?

本学の先生方は第一線で活躍していた「元プロ」ばかりです。現場を知っている先生だからこそ、技術だけでなく「現実」を教えることができます。お菓子作りの現場で働くということは「技術を教えてもらいながら、お金をもらう」ということです。しかし、学校は「お金を出して、技術を教えてもらう」。この違いを理解しなければなりません。
インターンシップでホテルや企業に赴くと、「初日だから見ておいて」と言われて、黙って見ているだけの学生が圧倒的に多いです。洗い物が溜まっていないか?何か自分にできることはないか?と考えながら仕事を見学して、これはできるかなと思ったときは「やって良いですか?」と一声掛けて動いてみる。プロの現場では「自ら考えて動く」ことが大切です。これができるようになるまでには、かなり時間が掛かります。
製菓だけに限りませんが、現場は楽しいだけでなく、辛く、厳しい面もあります。だから、現場に入ってすぐ躓いて、途中でリタイアしてしまう学生が多いんです。私たちは本学で学んだ学生がそうならないように、元プロとして指導することができます。

先生がお菓子作りの道に進んだキッカケは?

私の実家は八百屋と魚屋を営んでいました。裕福な家庭だったとは言えませんが、それでも年に何回かは「美味しいものを食べに行こう」と、いろいろなところに連れて行ってもらいました。だから、子どもの頃から食べ物に関わる仕事に就きたいと思っていました。
最初はフランス料理の料理人をやっていました。しかし、勤めていたレストランに「パティシエ部門」というものがあり、そこで作るスイーツが物凄く美味しかったんです!感銘を受けて、お菓子作りの道に進みました。
その後、ホテルでの勤務を経て、45歳のときに自分の店を持ちました。レストランやホテルの製菓は「ハレの日」のものですが、独立してからはそれ以外のもの、例えば最後の晩餐のような、お客さんの気持ちに立って作る機会を持てるようになりました。お客さんの反応を直に感じることができるのも良いですね。
東大阪大学には留学生が多く、今はイスラム教徒の学生が在学しています。私は若いときにインドネシアで働いていたことがあり、ハラールについて講義をしたこともあるのですが、「ハラールにも対応したお菓子作り」をめざして勉強しなおしています。本学では様々なことを経験できるので楽しいですね。

入学を考えている高校生にメッセージをお願いします。

私が学生に求める第一条件は「食べることが好き」ということです。また、将来的に調理や製菓を生業とするのであれば、世界中にはいろんな食べ物があるということを知っておいてほしいです。堅い書籍を読めというわけではなく、普段からテレビやインターネットでそういう情報を意識して見るだけでも構いません。実際に食べることができなくても、知識として蓄えていくだけでも、例えば実習で「クイニーアマンを作るよ」と言ったときに、何それ?となることを防ぐことができます。 私自身は、学生が卒業してそのままサヨナラではなくて、何か困ったとき、その道の先輩としてアドバイスができるよう気軽に来てもらえるような環境を作っていこうと思っています。研究室は1階にありますしね。(笑)

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